これでいいのだ

この言葉の奥深さが
大人になってからようやくわかってきた。

いい加減なようで、実はそうじゃない。

自分のできるところまでやってやりきったんだったら、
そのあとは自分から手放そう
これでいいのだ!


自己肯定して手放すことの大切さを
この7文字が言いきっていると思う。


籠の鳥を空に放すような、清々しい気分。


バカボンパパにこの言葉を言わせた赤塚不二夫さんは、
実はものすごい哲学者だったんじゃないかと思う。



この言葉で思い出したのが
年末に「Jブンガク」というNHKの番組で紹介された
1747年に出版された『労四狂』という書だ。


作者は自堕落先生こと、山崎浚明。
この「自堕落先生」という名前のインパクからし
漫画の題名っぽくて面白い。


自堕落先生はいくつかの武家に仕えるも中途退職。
医者として生計を立てつつ俳諧を得意としたという。


自堕落先生は言う。


人間は生きるだけで「苦労」し、
それが原因で「狂」ってしまう。

美味や美しい音楽など、
この世の楽しみを得るためには
やっぱり苦労が伴う。


そんな先生が行きつくのは佯死(ようし=うその死)という究極の解決法だった。

そして、
自分が一度死んだものとして生きることを思い立ち、
生きながら この世との決別を宣言し、
日暮里の寺で自らの葬儀を行った。



自堕落落先生は本気と冗談スレスレの論理で、
徹底して合理的に人生の意味を見つめた。


(以上は、番組で紹介されていた要約。)


・・・200年以上前に生前葬を行おうとするあたり、
周りからはかなりの変人と見られていたに違いないが
一度死んだことにした後は
本当に自らが望む人生を生きられたのではないだろうか。


自堕落先生の中に、バカボンパパにも似たものを感じた。
2人とも、冗談で行動しているように見えるけど、
実はすべて「本気」でやっていることなんだと思う。


自分が出来ることの限界・限度を知ったうえで
自分の中に持っているものを
出し惜しみせずに「本気」で手放していけるように、
エネルギーをため込まずに自分の中に澱みなく「流す」ように
執着のない毎日を暮らしていったら


きっと人生の終わりに近づいた時に
「これでいいのだ」と思えるのではないか、と思った。

赤塚不二夫自叙伝 これでいいのだ (文春文庫)

赤塚不二夫自叙伝 これでいいのだ (文春文庫)

クレイジーケンバンド『ガール!ガール!ガール!』に収録されている
“夕食”にも「これでいいのだ」が。
迷って考えた末に刺激的な冒険よりも、
いまのままの日常を選ぶまでの葛藤が、
歌詞だけでなくメロディーでも表現されてるようで、心が動かされた。
このアルバムで一番好きな曲。
剣さんは、すごい哲学者だなぁと思う。

ガール!ガール!ガール!

ガール!ガール!ガール!